東京都 江東区深川
開山別傳和尚350年遠忌を控え、境内全域にわたる整備を行うため依頼を受けた。本堂と山門を残し、他の全てをやり替える仕事で、時間的な制約を受ける中での計画となった。
庫裏、書院の新築、塀を含む外構全般の整備、北側駐車場と外物置、墓地の改修、さらには既存本堂の改修という大がかりな仕事である。関東震災後、寺域が狭められ、また都心に近い立地とあって敷地に余裕がなく、工事には難航を究めた。
競争入札の末に青森八戸の大山建工が建築を担い、すぐさま木材集めに掛かった。庫裏と書院だけで140坪超の建築とあって、大経木から挽き割ることで大量の木材の調達に充てるとともに、色目の揃った木材を整えたいと思った。
前住の建てられた本堂の棟の高さを超えずに庫裏を建てるとなると2階の階高がかなり低くなる。それらを登り梁でしのぎ、また寺院として、永年の風雪に耐える架構を構築すべく、大断面の材料と長尺材を生かした木の組み方で全体を整えている。
各種のディテールから建具に至るまでを全て図示し、短期間の工期にあたり、職人に後戻りをさせぬよう細心の注意を払いながら進めた。
主立った家具も全て特注で作るため、工事中幾度となく打ち合わせを重ね、庭については、工事に支障がある植裁を数度植え替えながら纏めていった。庭は京都の庭師の手による。
和尚さまのお声掛かりで檀家衆をはじめ、近隣の方など多くの人に助けられながら遠忌法要に間に合わせることが出来た。落慶には多くの檀家さんから謝辞を頂き、寺院建築にかかわることの責任の重さを、改めて痛感した仕事となった。
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