三重県 伊勢市
おはらい町の起点にあたる場所に建つ、菓子店舗を中心とした複合施設である。市営駐車場に隣接し、脇を通る県道は志摩へ抜ける幹線経路で、地域における交通の要所でもある。中でも車を利用する人にとっては、ここが地域の玄関口となるところで、訪れる人に伊勢という地を感じて貰えるあり方を模索した。
大規模な木造建築群で、地上部分だけで450坪を構える。大きな中庭を囲むよう建物を配置し、内外の混入によって豊かな空間となることを目指した。またここは五十鈴川とも堤防を介して接しており、川へのアプローチも可能としている。そのため、中庭のレベルを少しずつ上げていき、川沿いの建物フロアーが、堤防と同面になるよう設定している。これまでも五十鈴川を主題にした建築を作ってきたが、それらとともに、この五十鈴河畔を散策して貰える起点としての機能も期待した。
内宮までが、ここからおよそ800メートルあり、参道であるおはらい町通りに加えて、五十鈴河畔の動線がこの町に増えることは、地域にとっても幅が広がるに違いない。
特にこの場所は、伊勢が育んだ雄大な自然を間近に感じられるところでもあり、五十鈴川を挟んで望む山々が美しく目に飛び込む。また周囲は桜の名所でもあり、季節ともなると、まるで桜の中に建物が浮かんだように映る。神宮における五十鈴川を使った祭りもここが起点であり、そうした環境を知って貰うことも、地域にとって重要なことだと思う。
木材もなるべく近在のものを使うよう配慮し、大工をはじめとする職人衆も土地の人で構成した。このような大きなプロジェクトを日本伝統の技術で建てることなど稀少となった昨今であるが、若い職人たちも多数参加してくれ、技術の伝承にもひと役変えたのではないかと思っている。